ト ラ ッ プ 、
( ず っ と 君 の 隣 に い た い )
「ごめん、さん」
しばらく私はその場から動く事が出来なかった。
展開が速すぎて私の頭は全然ついていけなくて。
そしたら囁くように聞こえた声。
振り返れば、そこには申し訳なさそうな顔をした不二。
「ううん、全然・・・」
「でも、もし越前がさんと別れなくても、僕は振り向かせてみせるつもりだったから」
リョーマと・・・別れなくても・・・
ああ、そっか。私リョーマと別れたんだ。
改めて突きつけられる現実に、目頭が熱くなる。
「さん・・・?」
「あ、あれ?ごめっ・・・まだ状況掴めなくてさ・・・ごめっ・・・」
次から次へと滴り落ちる涙。
なんで・・・なんで止まらないんだろう。
ぽたぽたと雫が砂の上に落ちて、色が変わる。視界が歪む。
「大丈夫、あれは越前の本心じゃないよ」
そう言って不二は私をそっと抱き寄せてくれた。
自分の気持ち隠して、私の事を一番に考えてくれてるその優しさに胸が痛んだ。
さっきだってそうだ。
「さん、このドリンク部室にいるみんなに配っておくから着替えてきなよ」
私の事を一番に気遣ってくれた。
不二は・・・
温かくて、優しくて、
リョーマとは・・・違う。
不二と一緒になれたら、ずっとこの腕の中包まれていられたなら・・・
傷付かなくて済むかもしれない。
こんな思いしなくて済むかもしれない。
だけど・・・
「不二・・・ごめん・・・」
私を包む不二の腕が緩む。
見上げると、いつもの優しい不二の顔があった。
「うん、行っておいで」
本当に優しい人。
「ごめんね・・・気持ち、嬉しかった。ありがとう」
私はそのまま不二に背を向け、振り返らず走った。
ねえ、リョーマ。
もう1度だけ、私に振り向いてくれませんか?
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