ロ ゼ ッ タ 。

( 私 は い つ だ っ て あ な た と )



ヴヴヴヴヴ、ヴヴヴヴヴ

ポケットに入れていたスマホが震える。
画面を見ると、そこには“不二先輩”の文字。

「不二先輩・・・」

鼓動が高鳴る。
テニスならどんな試合でも絶対緊張なんてしないのに。

ヴヴヴヴヴ、ヴヴヴヴヴ

手の中で震えるスマホ。
出なきゃいけないのはわかってる。
けど・・・今、不二先輩に勝てる自信がない。

ヴヴヴヴヴ、ヴヴヴヴヴ

バイブ音が急かすように鳴り続ける。
俺は応答ボタンじゃなく、拒否ボタンに指を伸ばす。

―――ねぇ、また逃げんの?―――

ふと、自分の中で誰かが囁いた気がした。
拒否ボタンに伸ばす指を止め、応答ボタンをタップする。

『越前?』
「・・・ちーっす」

格好悪いと思われるかもしんないけど、正直怖い。
不二先輩の口からどんな言葉が放たれるのか、緊張と不安で息を呑む。

『僕、ふられたよ』
「え?」

ふられた・・・?

『その理由も、もうすぐしたらわかるよ』
「それって」
『その前に越前に一言言っておきたくて、電話したんだ』
「え・・・」 『僕まだ諦めたわけじゃないからさ。次、さんを傷付けたら容赦しないよ?』

不二先輩の言葉が重くのしかかる。
電話越しだけど、不二先輩が目の前に立っているようなそんな威圧を感じた。

「・・・不二先輩、」
『ん?』

「、リョーマっ」

後ろから聞こえた、君の声。

「・・・

隣からいなくなってしまった、手放してしまった君がここにいる。

「俺もうのこと手放す気ないんで」

もう、絶対手放さない。



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