ル ー チ ェ 、

( 君 が 好 き 、 そ れ だ け だ っ た ん だ )



むかついた。
ただ、不二先輩と楽しそうに話してるを見て、腹が立った。
他の男にそんな顔見せんなよ。
他の男とそんな楽しそうに喋んなよ。
は俺のもんだって。
俺の醜い独占欲がを傷付けた。

「いつも、あーやって他の男に身体触らせてんの?」

そんなこと言いたかったわけじゃない。

「ちやほやされていい気になってんじゃないの?」

傷付けたいわけじゃなかった。

「そんなに不二先輩がいいなら、不二先輩と付き合えばよかったじゃん」

手放したくなかったのに、自分から手放した。
もう、遅い。

「・・・俺もまだまだだね」

まだまだガキな自分に思わず嘲笑した。
自分から手放したくせに、の事が気になって仕方ない自分がいる。

今どうしてるだろうか。泣いてないだろうか。
不二先輩と一緒にいるを想像するだけでむしゃくしゃする。
きっと不二先輩のことだからを慰めて、優しい言葉の一つや二つ、掛けてあげてるんだろう。

「・・・いいんじゃないっすか」

傷付ける言葉しか吐かない俺とは違って。
いつだってそうだ。
プライドが邪魔して、ちゃんと自分の気持ち伝えられなくて。
だけど、は笑ってくれてたから。
そんな俺の隣で楽しそうに笑ってくれてたから。
いつの間にか俺の中で強くなっていった独占欲。
他の男にそんな顔見せないでほしい。
他の男とそんな楽しそうに喋らないでほしい。
気付けば棘のある言葉でを傷付けてばかりいた。





日が沈む。
空の色がオレンジから黒に変わる。
影が伸びていく。
気温が下がる。
吹きつける風が冷たい。

隣にいるはずのが・・・いない。

・・・」

空を見上げて、名前を呼ぶ。目頭が熱くなる。
らしくない俺が、確かにそこにいた。



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