「岳人・・・」
誰かのその声で俺は眠りから覚めた。
視界に広がる青い空と木漏れ陽はさっきと変わらぬまま、そこにあった。
だけど、誰かが近くにいる気がしてゆっくり上半身を起こす。
そして頭についた草を軽く払い、辺りを見渡した。
カサッ。
後ろから音が聞こえて、後ろを振り返るとそこには大きな木があって。
その木の向こうから制服がチラッと見えた。
(誰・・・?)
こんなところにいる物好きもいるもんなんだなぁと思いつつ。
あ、じゃあ俺も物好きの一人だなぁ・・・なんて。
「・・・」
気付かれないようそっと覗くと、そこには空を見上げる女の子がいた。
(・・・何年生だろう)
空が好きなのかなぁと思った。
だけど、その横顔は酷く悲しそうで。
俺には涙をこらえてるように見えた。
「・・・泣いてるの?」
気付いたら俺はその子に声をかけてて。
それに気付いた女の子は、いきおいよく振り返って驚いた様子で俺を見る。
「大丈夫?」
そう声をかけると、緊張走った表情が少し緩んだ気がした。
「ずっと・・・そこにいたの?」
そんなに怯えなくていいのに。
俺ってそんなに怖いのかなー・・・ちょっと傷付くC。
「ん〜、学校きて・・・気付いたら寝てた」
「え、じゃあ朝からずっとここにいたの?」
「そうみたい〜」
「はは、眠そうだね」
「アンタは泣きそうだね」
そう言うと、女の子は目を見開いた。
「そんな事ないよ。普通だよ」
何をそんなに我慢してるの?
「普通じゃないよ」
「普通だってばっ」
心の中にあるものがアンタを苦しめてんの?
「無理して笑ってるのバレバレだC」
「っ―――」
「我慢しなくていいじゃん」
俺のその言葉で、アンタが無理して作った笑顔が、ふっと静かに消えた。
「っうるさいうるさい!ほっといてよ!!」
その言葉は怒りに満ち溢れていたけど、今にも壊れてしまいそうで。
走り去るアンタを見て思った。
一 目 惚 れ
(今にも泣きそうなアンタの横顔が、酷く心に残ったんだ)