「ほぁら」
「やーん、カルピンふわふわー!」

今日は12月24日、リョーマの誕生日。
誕生日のお祝いをしに、リョーマの家にお邪魔してるんだけど・・・

「あんた本当可愛いねー、うりゃうりゃ」
「ほぁら」

それを見たリョーマが一つため息をつく。

「あんまりカルピンをいじめないでよね」
「失礼ね!可愛がってあげてるのに」

「ねー?」とカルピンに話しかければカルピンは「ほぁら」と鳴く。
もう可愛すぎるよー!

「ねえ、いつまでそこにいるつもり?俺は上にいくよ」

インターホンを鳴らし、玄関に入るとリョーマとカルピンが出迎えてくれて。
その様子があまりにも可愛いすぎて玄関でカルピンと戯れてたら、リョーマがいつの間にか不機嫌になってた。

「カルピンも連れてっていい?」
「・・・別にいいけど、」
「よし!カルピン一緒にいこっ」

そっとカルピンを抱き上げると「ほぁ゛ら」とちょっと嫌そうな声をあげた。
けど、私はお構いなしにカルピンを二階のリョーマの部屋に連れていった。
リョーマの部屋に足を踏み入れるなり、カルピンはもがいて私の腕の中から飛び降りる。

「っ―――!」

やられた。
飛び降りる時にカルピンは爪を立てていて、見事に私の腕を引っ?いていった。
と言っても長袖を着ていたから多分大したことはないんだけども。
念のため袖を捲り上げて確認すると、そこには薄っすら引っ掻き傷がついていた。

(そんなに私に抱っこされるのが嫌だったの、カルピン・・・!)

「何やってんの」

ベッドの上に座ってたリョーマは完璧に呆れ顔。
いやっそこは普通「大丈夫?」でしょ!
「ほぁら」カルピンは何事もなかったように、リョーマの隣にちょこんと座って足をペロペロ舐めていた。
くそー、あの猫め・・・!可愛いじゃないか!

「見せて」

リョーマは私に向かって手を差し出す。
どうしようかちょっと迷ったけど、リョーマに自分の腕を預けた。

「引っ掻き傷になってんじゃん」
「うん、でも全然大したことないよ」

そんな会話を繰り広げてても、カルピンは“自分は関係ない”といった様子で欠伸をしている。

(こいつ・・・!)

でもそんなとこも可愛いんだよね。
あ、なんかリョーマに似てるかも・・・

「カルピーン!」

そう考えるとなんだか無性に恋しくなって、さっき引っ掻かれたのも忘れてまたカルピンに抱きついた。

「ほぁらっ」
「ほんとおまえは可愛いねー」

プニプニつつけば、少し嫌がったように後退りする。
ほんとリョーマに似てるなぁ。

「ねえ、今日俺の誕生日なんだけど」

ムスッとして明らかに不機嫌なリョーマ。
それは構ってほしいという合図。

「だってカルピン可愛いんだもん」
「俺よりカルピンがいいわけ?」

そうくるか。

「リョーマも構って欲しいの?」
「別にそんなこと言ってない」
「猫に嫉妬するなんて、リョーマもまだまだだね〜」

リョーマの決め台詞を使うと、リョーマは更にムスッとして。
でもそれが妙に微笑ましくて。

「何ニヤついてんの、気持ち悪い」
「ちょっ、ひど!彼女に向かって気持ち悪いって!」
「・・・」

・・・リョーマからの返事はない。
そろそろ機嫌とらないとまずいかな・・・

「リョーマ!ほら、よしよし」

カルピンとしたのと同じようにリョーマの頭をそっと撫でた。
と、同時にリョーマがバシッと私の手を払いのける。

「った・・・」

リョーマが叩いたところは、ちょうどカルピンに引っ掻かれたところで。
一瞬ピリッと痛む。
リョーマは向こうにそっぽ向いたままで。こっちを見ようともしない。

(ちょっとやりすぎちゃった・・・?)

後悔しても時すでに遅し。
完全に不機嫌になったリョーマは手強い。

「リョーマ?ねえ、リョーマ」

何度呼んでも返事はなくて。部屋に空しく私の声が響くだけ。

「・・・カルピン」

カルピンに助けを求めようと視線をやるが、またしても知らんぷり。

ピリリリ、ピリリリ♪

はぁ、と溜息をつくと同時にスマホの音が部屋に響いた。

(リョーマのスマホだ・・・)

視線をリョーマに戻す。リョーマは全然動かなくて、電話に出る様子もない。

「ね、ねえ、リョーマ?携帯鳴ってるよ」

無視。

(くっ、小生意気なガキめ!)

なんて思ったり、思わなかったり。
一応私の方が先輩なんだけどな・・・
いっつもこのわがままな王子様に振り回されている気が・・・

ピリリリ・・・

あ、止まった。

チャンチャラチャン、チャンチャン♪

「うおっ!」

今度は私のポケットからスマホが鳴り出す。

(ビックリした・・・!)

ポケットからスマホを取り、画面を見ると「桃城 武」の文字。

(桃城・・・?なんだろう・・・)

応答ボタンをタップして、スマホをそっと耳に当てた。

「も、もしもし?」
『あっ!お前、今越前と一緒か?』
「え?」
『いや、越前のスマホにかけたんだけど繋がらなくてよ』
「あ・・・」

(あれ、桃城からだったのか)

『越前いるなら変わってほしいと思ったんだけど・・・』
「いや、一緒は一緒なんだけど・・・」
『・・・まさかお前らまた喧嘩してんのか?こりねぇな、こりねぇよ』
「うっさい、桃城!」

(痛いとこさらっと突っつくな!)

「随分楽しそうじゃん」

それは桃城の声ではなくて。
横を向けばリョーマが鋭い目でこっちを睨んでいた。

(や・・・ば・・・)

リョーマは私からスマホを奪う。

「ちょっ」
「桃先輩?」
『お、越前か?お前なんで電話出ね「今いいところなんだから邪魔しないでよね」

ブチッ・・・ツーツーツー

切った!この子、先輩からの電話切ったよ・・・!

「ねえ、俺怒ってるんだけど」
「はい、すみません」

怖い、怖い、怖い。

「今日何の日だっけ?」
「えー、リョーマくんの誕生日です」
「で?」

本当敵わない、リョーマだけには。

「誕生日おめでとう、リョーマ」

不機嫌になったり、生意気だったり、わがままで気紛れなリョーマ。

「リョーマって本当カルピンに似てるよね」
「・・・へえ」

思わず口から零れた言葉。
リョーマは何か思い付いたように不敵な笑みを浮かべる。

やばい。
本能的にそう感じた。

「あ、誕生日プレゼント買ってきて、鞄の中に入ってるんだけど」

この流れを変えようと、リョーマから離れて鞄を取ろうとした時だった。
いきなりリョーマに腕を引っ張られる。
さっきカルピンに引っ掻かれた上、リョーマに叩かれたところをしっかり握られてて。

「いっ・・・!」

また痛みが走って声を漏らせば、さらにリョーマの笑みは深まる。

「痛いなら舐めてあげるよ。俺、猫だし」

(っ―――、こいつ・・・!確信犯か!)

「遠慮シマス」
「言っとくけど、」

「俺が猫なら、は俺の飼い主なんだから、」

「ちゃんと世話、してよね」

そう言って、不敵な笑みを浮かべるリョーマを恋しいと思ってしまう私は重症なのでしょうか?



猫 王 子

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